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生物膜法による水処理

※本ページは『水浄化フォーラム』より転載しています。
<謝辞>
 「水」の安全確保と環境保全に係る知識と技術を、「水の浄化」に関わる方への参考となるサイトとして『水浄化フォーラム』を執筆・編集・管理いただい
​ ている環境技術学会 村上理事に心より感謝申し上げます。

 

 
 水浄化分野での生物膜とは、細菌類・菌類にそれらを捕食する原生動物・小動物が固体表面に付着して生息する一連の生物群のことで、汚水中の固形・溶解性の汚濁物質を捕捉して浄化する機能を有する。
 自然界においては、河川・湖沼・海域では砂・礫・水草・海藻・珊瑚礁などの表面に生物膜が発達し、細菌類・小動物、魚の産卵・稚魚、大小の魚類などから構成される大きな生態系を形成している。
 一方で、生物環境を人工的に制御して、目的とする浄化機能を有する生物膜を構築するシステムある。単独システムだけでなく、物理的・化学的・土木的手法も加えた多様な浄化システムがある。
 生物膜法の応用例としては、1)魚礁・藻場の造成、2)水産養殖・活魚・観賞魚の水槽浄化、3)生活排水(戸別・集合住宅や事業所等)の浄化槽、4)大規模の上水・下水施設の清浄ろ過(緩速ろ過)、5)産業排水の浄化、6)河川・湖沼・海域の浄化など、用水・排水・環境水の各分野で幅広く活用されている。
 ここでは、生活・産業排水の浄化だけでなく、河川・湖沼・海域の浄化を含めた広い意味での生物膜の機能とその応用例を解説する。

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1.生物膜の機能と特徴

 
(1)身の回りや自然環境における生物膜の例
1) 台所・風呂などの「ぬるぬる」

 台所の洗い桶・三角コーナー、風呂場の浴槽・床など、清掃しても1日もすると、「ぬるぬる」してくる。

2) 河川や海岸の砂・礫・岩などの皮膜
 河川や海岸の砂・礫・岩などには、緑色から褐色など、色や厚さも様々な皮膜が、それらの表面を覆っている。

3) 水草・海藻
 透明な河川や浅い海域の底には数十cm~数mの水草や海藻が繁茂している。これらの葉・茎には、泥のような物質が付着している。
 2)・3)で述べた水域での付着物を顕微鏡で観察すると1μm前後の細菌類から数mmの微少動物類・植物類など様々な生物が混在して生活していることが分かる。水中の栄養分を摂取した細菌類・菌類・藻類、これらを捕食する原生・小動物など、食物連鎖の生態系を構成している。砂・礫・水草・海藻は、微小生物の生息場だけでなく、産卵・稚魚・小型魚の生息空間をつくっている。
 また、1)で述べた「ぬるぬる」は細菌類が分泌した粘質物質で、細菌類が固体表面への付着能を有するのみでなく、微細固形物(高分子物質)の捕捉能を有する。この物質中には高分子を加水分解して低分子化(アミノ酸・有機酸・糖など)する酵素を含み、低分子化された物質を細胞膜を通して取り込んでいる。


(2)水域の物質循環と生物膜のモデル
 本節では水域の生態系による物質循環を簡略化するため、図1に示すように細菌類(分解者、嫌気性・好気性)、植物群(生産者、光合成能)、動物群(消費者、捕食者)に大別する。
 植物・動物の枯死体・排泄物・遺体などの固形物質を低分子化し、その溶解物質を細胞内に取り込み代謝分解する主役は、細菌類である。細菌類は偏性好気性(好気性)、通性嫌気性(無酸素状態)、偏性嫌気性(嫌気性)に大別される。有機物だけでなく、窒素、イオウ、鉄などの無機物も嫌気・好気条件によって、それぞれの条件で生息する細菌類によって酸化または還元される。
 以上のような一連の細菌群によって有機化合物は炭酸ガス・メタンガスへ、窒素化合物は窒素ガスへ変換されて水域外へ放出される。一方、リンは、好気性状態では鉄・アルミニウム・カルシウムなどと反応して難溶解性塩を生成するが、嫌気状態では鉄の還元やpH低下などにより溶解性となる。この再溶解リンは、陸域では作物植物の肥料となるが、水域では、特に微細藻類(淡水ではアオコ、海水では赤潮など、魚類の毒性物質や異臭の原因)を発生する原因となる。湖沼等では、増殖した微細藻類が水底へ沈降・枯死して、図1の物質循環を繰り返すことにより、水質悪化と栄養塩類が蓄積されることとなる。このような自然現象は富栄養化と呼ばれている。海域では、赤潮などの微細藻類が毒性物質を放出し、魚類のへい死したり、これを捕食した貝類体内への毒物の蓄積などの原因となる。
 生物膜を利用した汚水浄化システムの特徴は、富栄養化機構を巧みに利用して汚濁物質を除去することにある。なお、富栄養化したダム・湖沼を上水源とする場合には、着色・異臭・異味に加え、トリハロメタン生成源となるが、これらは生物膜のみでは除去できないので、浄水施設ではこれらを除去するための物理化学的(塩素・オゾン・活性炭など)施設・設備が必要となる。

 

図1 自然界における生態系による物質循環と生物膜の理解モデル.jpg

図2 有機性高分子物質の嫌気分解 [Gujer & Zehnder, 1983]

 
(3)生物膜法の工学的利用
 自然界には細菌類は好気性、通性嫌気性および偏性嫌気性がその環境条件に対応して生存するが、水浄化においては工学的にその環境を制御してバランス良く細菌類を選別して、それぞれの汚濁物質を汚水から取り除く方法が採用される。


1) 生物膜法の特徴
 水浄化に細菌類を利用する方法には、1) 細菌類を水中に懸濁状態で利用する浮遊法と2)本ページで扱う個体表面に付着・保持して利用する生物膜法がある。
 懸濁法に対する生物膜を比較すると(表1)、有効容積中の微生物量が少ないが、負荷変動に対して強く、発生する汚泥量が少なく、維持管理が簡易であることである。
 微生物量が少ないのは、浮遊法が水空間全体を利用しているのに対して、生物膜法は表面積または担体間空隙を利用するからである。流入水量や負荷変動に対して強く安定しているのは、微生物群が固定化されているからである。ただし、過大な負荷に対して処理水質が安定していることではない。発生する汚泥が少ないのは、多種多様な生物からなる生態系が形成され、増殖した微生物が他の生物によって捕食されるからである。
 維持管理が簡易なことから、国内では、戸建て住宅の家庭排水の浄化槽など、専任要員がいない中小浄化設備などに利用されている(4.(2)に記載)。

表1 水浄化における生物膜法と浮遊法の比較.jpg

表1 水浄化における生物膜法と浮遊法の比較

 
2) 生物膜法の分類
 生物膜利用法には、細菌類の生息条件の視点から、1)好気条件に制御して汚水中の有機物を炭酸ガスへ変換する方法、2)無酸素条件で結合性酸素で呼吸する細菌類を利用して窒素ガスへ変換する方法と、3)絶対(偏性)嫌気条件下で固形物の加水分解・溶解する細菌群と溶解した物質をメタン・炭酸ガスへ変換する方法に大別される。
 工学・土木的な視点からの生物膜利用法は、1)反応槽(池)内に生物膜を保持して汚水を浄化する分野と2)河川・湖沼・海域などに浄化システムを構築して水域を浄化する分野に大別される。
 微生物を保持する固体を担体と称することが多いが、利用する方法や分野によって充填材、接触材、ろ材などどとも呼ばれている。また、担体を構成(充填)する部分を担体床、接触床またはろ床などという。
 さらに、微生物担体を装置内に1)固定床法と、2)反応槽内に流動させる流動床法がある。
 以上述べたように、生物膜法には多種多様な方式があり、単一装置あるいは他方法と組み合わせた複合システムとして、様々な水浄化分野で広く活用されている。

2.生物膜法の反応槽

 
 一般的に、大量の水を処理する上水や下水の処理施設では広大な面積を占めるので、国内では水を処理する単位設備を池(pond)といい、少・中量の水を処理する単位設備は槽(tank)といわれる。ここでは、特に断らない限り、池も槽で表示する。ここでは、その付帯設備(空気・酸素を供給する設備、水位計と流入・放流・循環等のポンプ類、増殖汚泥の引き抜き、生物膜の剝離・洗浄などの設備など)を含めて反応槽と表示する。

(1)反応槽の方式と種類
 反応槽の方式と種類を図2に示す。まず、反応槽は、散水型(A)と浸漬型に分類される。散水型は担体が大気と接触し、浸漬型は担体が全て水中に浸漬している。浸漬型は固定床型(B)と流動床型(C)に分けられる。流動床では、担体が槽内で自由に流動して、汚水と接触させている。
 固定床型はさらに上向流型と下降流型がある。また、固定床には多層型(D)や密封型(E)があり、密封型ではろ床の圧力損失を計測する圧力計または外接した水頭差計を取付けて、運転や担体洗浄を適切に実施する。
 密封型は、設置面積・空間が狭い浄水設備として利用される(最大圧力損失は、通常、1~2mの水圧に設定されることが多い)。
 多層型では比重の異なる担体を充填して、各担体層を分けることが多いが、異なる性状の担体を支持体で保持・分層する反応槽も用いられている。
 以下、代表的な生物膜法について紹介する。

 

図2 生物膜法の反応槽形式.jpg

図2 生物膜法の反応槽形式

 
(2)散水ろ床法
 散水ろ床法では、担体を詰めたろ床の上から散水し、担体表面に付着した微生物によって浄化する。酸素はろ床の下から、空気の自然対流によって供給される。担体は、以前には石・礫が利用されたが、現在では軽くて比表面積の大きい多様な形状のプラスチックが用いられている。維持管理が容易で省エネルギーである。散水装置はろ床に対して均一に汚水を散水することで、代表的なものとして回転式散水法がある。
 一方で、ハエや異臭の発生、季節の変わり目に生物膜の脱落、処理水の泡立ち、懸濁物質の増加など、水質が悪化することがある。
 この方法は今日のわが国ではほとんど採用されていないが、簡易な方法であり、国際的には地域の状況によって有効な方法である。


(3)接触曝気法
 接触曝気法は、ろ床(接触床)が全て汚水中に浸漬している固定型で、酸素を供給する設備が必要となる。なお、本法に類似した絶対嫌気性接触法では、反応槽は密封され酸素の溶解を阻止し、汚水をろ床へ通水する。脱窒素システムでは、ろ床を無酸素状態にして通水し、亜・硝酸イオンを窒素分子へ還元する。
 酸素供給は、反応槽内の空間へ空気を散気して酸素を溶解するとともに、そのエアリフト効果により汚水を攪拌または循環してろ床内の担体と接触させている。図3に示すように、全面曝気、側面曝気、中心曝気の3つ方法がある。ろ床が大きくなると、汚水と担体との接触が不均一となるので、反応槽を仕切るかまたは反応槽を複数設置して汚水を分配・流入し、汚水と担体との均一な接触を行う。ろ床の縦:横は1:1~3とすることが一般的である。
 中央型と側面型には、同図の平面図に示すようの空隙も円筒型(A)、楕円筒型(B)、板で仕切った型(CやD)などがある。
 担体洗浄用の曝気装置を取り付ける場合には、(C)と(D)のようなタイプが補修や配管内洗浄などでの取り外しに適している。(A)のようなタイプは、反応槽内の担体の充填率を高くとることができるが、ろ材底部の附帯設備の管理が難しく、上部からのジェット水流などで生物膜の剥離ができる担体あるいは逆洗により容易に流動状態となる担体に適している。
 接触曝気型では、肥大化した生物膜の剝離片が処理水中に混在するので、後段に沈殿槽が必要となる。代表的な適用例は、生活排水を処理する小中型の浄化槽である。

図3 接触曝気法における酸素供給と循環接触.jpg

図3 接触曝気法における酸素供給と循環接触

 
(4)生物ろ過法
 固形物質の捕捉と溶解物質の分解機能を兼ねた浄化システムで、空隙率の少ないろ床とし、粒状または小サイズ中空状の担体を利用することが多い。固形物・溶解性を含めて汚濁物質濃度が低い用水・汚水の浄化に利用される。後段の沈殿槽は特別な場合を除き、付設されない。
 担体が数mm以上のものは、観賞・養殖・活魚などの魚の水槽の水浄化に利用されている。浄水場の緩速砂ろ過では、有効径0.5~0.7mm、均等係数1.7以下の砂が用いられる。サイズの小さい担体を導入したろ床では、その圧力損失が高く曝気循環の効率が悪い場合には、外部で散気して酸素を含む汚水を反応槽へ流入・循環させる(図4の外部型)。

図4 生物ろ過法の酸素供給と循環接触.jpg

図4 生物ろ過法の酸素供給と循環接触

 
(5)回転円盤法

 本体の中心軸に多数の軽量で強固な円板体(径3~5m)を一定間隔ごとに多数枚固定(基本構成)し、反遠藤形状の接触反応槽に円板表面積の40%程度を浸漬させ(図5)、駆動装置により、円板の外周速度20m/分以下で低速回転させる。水量と汚濁成分によって、上記基本構成を単独、あるいは複数を直列または並列に組み合わせてシステムを構成する。後段に剝離汚泥等を除去する分離槽が必要である。
 

図5 回転円盤法の事例.jpg

図4 生物ろ過法の酸素供給と循環接触
引用資料 Material cited: 三鈴工業 Misuzu Industry

 
(6)流動床法
 比重が水と等しく、汚水とともに自由に流動する担体を利用する反応槽(嫌気槽では攪拌のみ、好気槽では曝気攪拌)で、担体の表面・内部に微生物群を保持して汚水を浄化する(図2(C))。
 一般的には数~数10mmの中空円筒状、骨格球状、粒状またはスポンジ状などの担体を、反応槽の10~30%程度充填する。処理水の流出側にはスクリーンを設置して、担体が槽内部へ保持される。また、固定したスクリーン枠内で流動させる方式もある。
 担体表面の生物膜は、担体同士の衝突・接触により、剝離されて適切な膜厚に更新される。また、担体内部では、微生物は滞留日数が長く保たれ、硝化菌などの増殖速度の遅い細菌群が保持できる。一般的には、後段に汚泥分離装置が付設される。


活性汚泥法の効率向上
 本法は、既設の活性汚泥法へ適用すると、反応槽内の微生物量を増大させて処理効率を高めたり、また、浮遊性微生物群と異なる微生物群(例えば、増殖速度の遅いものを)を担体に保持させ、特殊な機能を付加することができる。
 また、既設の処理施設に対し、状況変化により負荷が当初の計画より増加あるいは減少した場合や新たな機能を付加する場合に、本法の導入においては、処理水流出部分にストレーナー等を付設するだけで、既存施設の改修や増設をしなくても対応が可能となる。

 

図6 流動担体型型活性汚泥法.jpg

図6 流動担体型型活性汚泥法
引用資料 Matrial cited: 化工機プラント 環境プラント Kakoki Plant & Environment Engineering.

 
(7)生物膜の洗浄・再生
 担体に付着した生物膜は、微生物の増殖により肥大する。ろ床に部分的あるいは全面的に閉塞が起こり、担体に付着した生物群との接触が不十分となり、浄化能力が低下する。担体に付着した生物物膜を剝離・除去することをろ床の洗浄または再生という。また、ろ床への通水方向を逆転して洗浄・再生する場合には逆洗という。洗浄・再生の方法を問わず、逆洗ということもある。
 洗浄法には、手作業による方法、自動的に行う方法、また、一定間隔や連続的に行う方法などに分類される(図7)。これらの方法の選定は、担体や反応槽の種類・形式や維持管理体制により異なる。
 一般的には、稼働時より速い流速の洗浄水またはろ床への直接曝気等により 1) 担体を流動状態にする方法と 2) 固定された担体表面から直接剝離する。また、3) 反応槽内の汚水を引き抜いて手作業による水道水のジェット水流により生物膜を直接剝離する方法では、ろ床底部まで洗浄水が届く形状の担体(図7(A))に限定される。
 4) 連続洗浄法では、均一粒径率の高い砂など、流動性・耐摩耗性の高い担体に適用される。洗浄後の濁りが発生することなく、低い一定のろ過抵抗で安定した良質のろ過水が連続的に得られる。この方法は生物膜法というより物理的なろ過に分類されるが、メタノール添加により脱窒素機能を有するなど生物機能を付加することが可能となる。連続洗浄法の代表的なものに移床式上向流連続砂ろ過がある(図7(D)参照)。

図7 生物膜の洗浄・再生.jpg
図7 生物膜の洗浄・再生.jpg

図7 生物膜の洗浄・再生

3.担体の種類と選定

 
 担体の種類と選定には、生物膜法を用いた反応槽の方式と深く関係する。特に、反応槽の方式として1) 散水ろ床法・2) 接触曝気法・3) 生物ろ過法・4) 流動床法では、利用目的が異なり選定する担体も大きく異なる。また、方式2)~4)を同一の反応槽に組み込み、加えて好気・嫌気条件も異なる複雑な浄化システムも多数ある。いずれの方式・システムにおいても、必須の共通事項は、肥大化した生物膜の剝離(洗浄・逆洗)をどのような方法で行うかによって、選定する担体も異なることである。

(1)材質による分類
 担体は、1)天然品か 2)合成品か、また材質からは無機質か有機質かに大別される。
 無機質には 1)に属する砂・礫・石・アンスラサイト(無煙炭を破砕したもの)・死骸サンゴ、2)に属するセラミック(焼成品)・ゼオライトなどがある。有機質には1)に属するシュロ(ヤシ科植物の皮)・ヨシなどの繊維質など、2)に属するプラスチック・合成繊維などがある。
 環境水(河川・湖沼・海域など)浄化では、水草・海藻・水辺植物の茎・浮草の根から底泥表層部・砂・礫などが自然にあるもの、これらを模した人工製造品も多数利用されている。


(2)形状による分類
 粒状、球・楕円体状、立方・長方体状、板状(凹凸や波形)、布状、糸状、円筒状、格子状、多孔状など、また、これらの形状を立体的に組み合わせた形状が多い(図8)。流動ろ床においては、粒状やスポンジ状の担体が使用される。板状のものを立体的に組み合わせた担体は、適切なサイズにカットして反応槽に直接取り付けることができる。

図8 担体の形状の事例.jpg

図8 担体の形状の事例

表2 浄化槽の嫌気ろ床に用いられている一般的担体の形状 [日環教セ、2017].jpg

表2 浄化槽の嫌気ろ床に用いられている一般的担体の形状 [日環教セ、2017]

 
(3)比重による分類
 比重は反応槽に充填うる担体には、沈降性、浮上性または流動性の3つに分けられる。
 固定型ろ床においては、板状・格子状で固定された担体を除き、沈降性または浮上性の担体おいては稼働時(特に上向流型)には固定状態である。逆洗や曝気による担体の洗浄においては流動状態となる比重(サイズによって異なる)が求められる。流動床に用いる担体では、水の流動に対応して自由に流動できる比重が求められる。
 また、多層ろ床では比重差(沈降速度差はサイズと比重に関係する)により分層するか、メッシュ状のストレーナ枠に保持した異なるろ床で分層する。水流によって分層する多層ろ床では、担体の比重(サイズを含めて)が選定条件となる。


(4)サイズによる分類
 水浄化の目的・用途により、担体はその形状のサイズが選別の重要な要素となる。
 形状によっては、担体サイズとその機能に大きな相関はないが、空隙率の低い砂など粒状の担体はそのサイズ(均等率を含む)と機能の相関性が高い。例えば、上水の浄化では懸濁物質の除去に緩速ろ過がある。これは5m/日(= 25cm/時間)の流速で通水する。この機能は、沈降分離池で除去できない微細粒子を捕捉するとともに、ろ床上部に生息する原生動物が捕捉粒子を摂取して有機物を分解している。また、比重の大きい礫・石などは、生物膜の洗浄・再生が難しくなる。また、円筒形の担体はサイズが小さくなると、筒内に生物膜が充満し、その洗浄・再生法が困難となる。
 機能が異なる担体をストレーナー等で分層する反応槽内にあっては、支持体内部に逆洗展開率(下記3.(6) 5)を参照)を満たす空間を設けるなど、洗浄・再生が可能な構造とする。


(5)ろ床の支持体
 担体を保持する支持体には、1)ろ床の水平面全体に対し均等に流入・流出させる機能、2)担体がろ床外へ流出しない機能、3)逆洗に支障のない構造(大きいサイズの担体の曝気洗浄など)、4)荷重に耐える強度(担体比重の大きいもの、ろ過抵抗が大きいものなど)、5)支持体通過での圧力損失の低いもの(砂・ビーズなど、サイズの小さい担体の支持体)などが求められる。ろ床の水平面が広くなる場合には、支持体をブロック化するなど、上記1)から5)の要件を満たすような構造とする。
 前述2)の項目については、担体充填槽の流入部・流出部や逆洗水の取水部などに、担体より目幅の小さいスリットやメッシュ状の担体受けや押さえが設置されることとなる。担体受け・押さえの部分では閉塞の可能性が高くなるので、設計・維持管理において留意する。担体サイズが特に小さい生物ろ過では、ストレーナーなどが取り付けられる。

図9 担体支持体の事例.jpg

図9 担体支持体の事例

 
(6)担体の選定指標
1)ろ床の充填率
 反応槽の有効容積に占めるろ床容積(固定・流動を問わず)を担体充填率 [%] という。

2)担体ろ床内の空隙率
 ろ床容積に占める空間容積を空隙率といい、ろ床容積に占める水量 [m3/m3] でほぼ表すことができる。具体的には、水を満たした水槽に一定容積の担体を入れ、増加した水量で求める方法、あるいは空の水槽に一定容積の担体を充填し、担体上部表面まで水を満たして、その水量から空隙量を求めることができる。空隙率はろ床内に保持する生物量と処理性能に大きく影響するが、担体の洗浄・再生の方法やその間隔の日数・回数などの維持管理の面から選定する。

3)担体の比表面積
 流動水が接触できる担体の面積で、比表面積とは単位容積当たりの担体の表面積 [m2/m3] で表すことができる。活性炭は分子 (10-10mレベルのサイズ) を吸着し、ミクロポア(10-9mレベル)やマクロポア(10-6mレベル)を含めて表面積を表す。生物膜担体では付着する細菌類は10-6mレベルであるので、活性炭などの化学物質吸着材の表面積 [m3/kg] とは異なることに留意する。マクロポアやミクロポアを有する多孔質担体も広く用いられているが、主として製造過程で担体比重を制御している。

4)担体の摩耗性
 担体は肥大化した生物膜を剝離するための洗浄が定期的に行われるので、破砕、剥がれ、千切れなどにより担体が消耗するので定期的な補充が必要となり、耐摩耗性の担体が望まれる。特に、流動床では常に衝突・接触が起こるので、担体の耐摩耗性が重要な要素となる。

5)逆洗展開率
 逆洗を行う場合、洗浄水の水量が少ないほど、抜取り汚泥の処理・処分の手間・経費が削減される。逆洗により担体が流動状態となる容積のろ床容積に対する増加率 [%] で示す。逆洗展開率が低いほど、洗浄水が少量となる。また、洗浄水の流速>沈降(また浮上)速度で流動状態となるので、展開率は担体の比重・サイズと洗水の速度・粘度(水温)に依存することとなる。

6)担体への生物膜の付着性
 細菌類の担体表面への付着性は、細菌類の好気・嫌気性やその生物群、汚水成分とその濃度、淡水・海水、温度など様々な要因によって異なる。付着性の弱い細菌類では、担体空隙率、フロック生成能、担体表面の性状(微細な凹凸、繊毛、表面電荷、親水・疎水性など)が要因となる。
 生物膜の付着性は、稼働中は担体表面に保持され、肥大化した生物膜は逆洗等の簡便な操作で剝離・除去されるように、適度な付着力が求められる。前述したように、生物膜の付着力は担体表面の性質や形状に大きく依存するので、選定において重要な条件となる。
 活性汚泥法の効率向上の目的で、流動性担体の中には、通常の有機物の酸化細菌群と硝化菌群の担体への付着性の差異を利用して、硝化菌群を選択的に付着させる担体も開発されている。
 なお、空隙率の低いろ床では、担体表面や担体細孔に付着するというより微生物フロックが担体粒子間の空隙に保持される傾向が高い。

4.生物膜法を利用した水浄化事例

 
(1)水道水-緩速ろ過
 浄水場では、原水中の砂除去(図10-②)、凝集沈殿による懸濁物の除去(④)、微細粒子のろ過除去(⑤)、消毒剤(塩素)を投入(⑥)したのち、配水池(⑧)を経て、各家庭などに水道水が供給される。なお、活性炭接触処理(③)は、原水中の臭気成分や難分解性物質の除去に用いられ、全ての浄水場に設置されている工程ではない。
 工程(⑤)において、緩速ろ過池に原水とを通していくと、砂槽の上に厚さ数ミリの藻類や微生物による生物ろ過膜が自然に作られる。緩速ろ過池では主にこの膜を通過するときに微生物の働きによって、水が浄化される。以前において上水場に多数採用されていたが、設置スペースが広いことと、水源の水質悪化にともない、前段での付帯設備(工程<>③や④)を設けた急速ろ過にとって代わられているが、生物膜の上水場への利用事例として紹介する。
 緩速ろ過池の機能として、1) にごりの除去、2) 気性微生物によるアンモニア・マンガンの除去、3) 微生物によるかび臭いの除去、4) 生分解性および吸着による有機物の削減、5) 微少動物の摂取によるクリプトの不活性化などが上げられる。

図10 浄水場のしくみの事例.jpg

図10 浄水場のしくみの事例
引用資料 Reference material:和歌山市 Wakayama city

 
(2)家庭排水-小型浄化槽
 今日の合併浄化槽は、有機物の除去のみでなく、窒素・リンを除去する高機能を有する製品も多数利用されている。ここでは窒素型小型浄化槽を事例として取り上げる。
 浄化槽の構造は、流入水 → 1) 固形物の沈降分離と浄化(嫌気性、2槽)→ 2)曝気槽 → 3) 沈殿槽→ 4)消毒→ 放流のプロセスから構成されている。さらに、2)曝気槽の硝化液を1)無酸素槽へ返送(窒素除去)、3)沈殿槽の汚泥を3)曝気槽の底面へスロットタイプで移動させ、この汚泥をエアリフトで 1)嫌気槽へ返送して貯留/消化する機能を有している。
 ここで、1)嫌気槽および2)曝気槽にはそれぞれ異なる担体を付設して、各槽の効率向上を行っている。嫌気槽では固定床、曝気槽では固定床または流動床のいずれかが採用されている。
 家庭排水の浄化槽は、コンパクトであるが、酸素供給、汚水・汚泥の移動、ろ床の洗浄・再生などの各機能をエアポンプで行うなど、安定可動性と維持管理上の様々な工夫がなされている。多機能であるが、維持管理(保守点検・清掃・汚泥抜取り)が数ヶ月・年単位でも、公共下水処理場と同等な水質浄化が行えるシステムとなっている。詳しくは、他のページを参照のこと。
 編者が特に強調したいことは、自治体と民間が一体となった浄化槽の普及と管理の社会システムが整備され、適正な保守・点検・清掃・汚泥抜取が適正に実施されており、環境問題の解決のみでなく、地域の雇用にも貢献していることである。

図11 窒素除去型浄化槽.jpg

図11 窒素除去型浄化槽
1) 嫌気ろ床槽 2) 好気ろ床槽 3) 沈殿槽 4) 消毒槽
引用資料 Material cited: 小諸市  Komoro city

 
(3)流動担体型活性汚泥法
 活性汚泥法を用いた汚水処理施設での問題点は、1) 計画水量以上の下水の流入、2) 汚泥膨化(バルキング)、3) 窒素・リンの除去、4) 発生汚泥量の削減などがある。これらの解決策の一つとして、曝気タンクへの流動担体法がある。この方法の利点は、曝気槽に担体流出を阻止するスクリーンを付設するだけで上記課題を解決できることにある。
 この流動担体型活性汚泥法の特徴は、1)処理効率の向上と設備のコンパクト化、2)運転管理の簡素化、3)発生汚泥の減量化が可能となる。担体の充填率は、曝気槽の有効容積に対して10~20%程度である。流動による担体の量の減少は、定期的に補充を行う。比重が水に近く、曝気攪拌などで、水中に浮遊し、微生物を出来るだけ多く保持できればよいので、様々な材質・形状・性能を有する担体が開発・実用化されている。上記の浄化槽での曝気槽への導入も同じ原理である。2つの流動担体の事例を下記の写真に示す。

写真1 流動担体事例.jpg

写真1 流動担体事例

写真2 流動担体事例2.jpg

写真2 流動担体事例2

 
(4)工業排水-難分解性有機物
 2,3,4,4-tetrahydroxybenzophenone(THBP)は半導体製造に用いられるフォトレジストの原料である。THBP製造工程排液の主な汚濁物質はTHBPで他に少量の原料および副生成物を含み、これらの汚濁物質は芳香族系の化合物で、極めて生物難分解性である。
 本排液処理の基本プロセスは、海水を添加しフェライトを陽極とする電解(図12)により活性電解塩素を発生させ、THBPおよびその副生成物を生物分解性物質へ変換・改質したのち、生物膜法の一つである浸漬ろ床(生物ろ過、図13および写真3)法により除去する方法である。この事例は、特殊な排水を処理できる微生物を育成・保持できる生物膜法を利用したものである。増殖率が遅く馴致期間も半年以上を要するが、生成する汚泥も極めて少ないことが特徴である。活性汚泥法へのスケールアップの基礎実験としての事例である。詳しくは、文献を参照のこと。

図12 電解実験装置.jpg

図12 電解実験装置

図13 浸漬ろ床実験装置.jpg

図13 浸漬ろ床実験装置

写真3 浸漬ろ床実験装置の全景.jpg

写真3 浸漬ろ床実験装置の全景

 
(5)ゼロエミッション型水産養殖-生物ろ過と植生
 養殖の自家汚染を防止、生産性の向上と環境破壊の防止を目的として、水耕栽培を併用したゼロエミッション型水産養殖のモデル(図14)である。
 このモデルは、飼料 → 魚類 → 残存飼料・排泄物 → 微生物(生物膜)→ 無機塩類 → 水耕栽培(栄養塩類除去)の生態系循環経路より構成される。実験装置の概略を図15および写真4に示す。水耕栽培の生産物は天日乾燥の後、野菜畑の有機栽培に利用する。生物膜法の担体として、吊り下げ紐状を利用している。詳しくは文献を参照のこと。

図14 ゼロエミッション型水産養殖のモデル.jpg

図14 ゼロエミッション型水産養殖のモデル

図15 ゼロエミッション型水産養殖の実験装置の概要図.jpg

図15 ゼロエミッション型水産養殖の実験装置の概要図

写真4 浸漬ろ床による浄化実験装置.jpg

写真4 浸漬ろ床による浄化実験装置

 
(6)河川浄化―瀬と淵の造成
 川が本来もっている自浄作用を発揮できる「瀬」と「淵」を再現した河川の浄化事例である。建設省が進める様々な河川浄化プロジェクトの一つの事例である。
 流れがゆっくりした「淵」では固形物質を沈殿・接触する場を持たせ、水の流れの速い「瀬」では接触酸化に必要な酸素供給と砂礫間を通る際のろ過機能と表面に付着した生物膜により、汚濁物質を除去する。
 この方法の特徴は、河川の浄化作用のみでなく、生息する原生・微少動物の種類も多様で、さらに「淵」と「瀬」で棲み分けする大小様々な大小様々な魚種の生息環境を提供することに特徴がある。

写真16 瀬と淵の造成による河川浄化の事例.jpg

写真4 浸漬ろ床による浄化実験装置
引用資料 Mterial cited: 国土交通省 MLIT

参考文献


 日本環境整備教育センター(日環教セ)、2017:浄化槽の維持管理(上巻)、p.175
 引用した他の文献・イラスト・写真等は本文中に示した。

 

1.生物膜の機能と特徴
(1)身の回りにおける生物膜の例
(2)水域の生物膜モデル
(3)生物膜法の工学的利用
2.生物膜法の反応槽
(1)反応槽の方式と種類
(2)散水ろ床法
(3)接触曝気法
(4)生物ろ過法
(5)回転円盤法
(6)流動床法
(7)生物膜の洗浄・再生
3.担体の種類と選定
(1)材質による分類
(2)形状による分類
(3)比重による分類
(4)サイズによる分類
(5)ろ床の支持体
(6)担体の選定指標
4.生物膜法を利用した水浄化事例
(1)水道水-緩速ろ過
(2)家庭排水-小型浄化槽
(3)流動担体型活性汚泥法
(4)工業排水-難分解性有機物
(5)ゼロエミッション型水産養殖
(6)河川浄化―瀬と淵の造成
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