固液分離-夾雑物・粗大固形物

※本ページは『水浄化フォーラム』より転載しています。
<謝辞>
 「水」の安全確保と環境保全に係る知識と技術を、「水の浄化」に関わる方への参考となるサイトとして『水浄化フォーラム』を執筆・編集・管理いただい
​ ている環境技術学会 村上理事に心より感謝申し上げます。

 

 
写真2 傾斜板設置円形沈殿の事例 [水道機工].jpg

 
用水や汚水の浄化においては、それらの原水中には異物(夾雑物)・固形物、浮遊物および溶解物など、様々な形態の物質が含まれている。
水浄化では、物理・化学・生物などの技術が組み合わされて、目的とする用途別の水質が得られる。異物・固形物(油脂類を含む)は、送液装置などの障害となったり、後段の処理に対して悪影響を及ぼす。異物・固形物は、一般的には、水浄化工程では初段において、機械的・物理的な方法を用いて分離・除去される。また、後段の化学あるいは生物など浄化工程では、原水中の溶解性物質がそれぞれ無機性あるいは生物性の固形物質に変換され、これらを分離・除去する工程が設置される。なお、水浄化における溶解性物質とは、電解質が水に溶解した状態の物質のみでなく、一般の水質分析に用いられるろ紙を通過できる固形物質も溶解性として扱っている。
図1に固形物質の粒子径と固液分離技術を示す。一連の本解説では、異物・固形物および浮遊物質の分離・除去に関する技術について解説する。

図1 固形物の粒子径と固液分離技術.jpg

図1 固形物の粒子径と固液分離技術

Ⅰ.スクリーン~ゴミ・異物の除去

 
 用水・排水のいずれの原水も、それらに混入している粗大ゴミ・大きな異物(または、し渣)をスクリーンにより取り除いてから、それぞれの目的の水浄化処理が行われる。
 スクリーンには、水浄化にのみでなく、農作物・加工食品・工業部品・廃棄物処理などにおいて、目的物をサイズによって固定物を分級する方法としても広く活用され、様々な方式が開発されている。ここでは、水浄化に多様されるスクリーンの主な方式について説明する。表1にスクリーンの代表的な方式を示す。

表1 水浄化用の代表的なスクリーンの方式.jpg

表1 水浄化用の代表的なスクリーンの方式

 
1.バー・スクリーン
 バー・スクリーンは、円・角型の棒や板などを一定の平行間隔で外枠に固定したもので、ゴミや異物を取り除き、水を扱う分野で広く掻く活用されている。図1に溜池の放流口や農業用水路に設置されるバー・スクリーンを示す。主に、草や木の小枝・落葉などの粗大ゴミを取り除く。バーの間隔は5cm前後(荒目スクーン相当)である。スクリーンは垂直に設置され、適宜、熊手などで除去される。また、水道・工業用水路や一般水路などでは、天然粗大ゴミに加えて、廃棄された様々な粗大ゴミの除去に用いられている。傾斜バー・スクリーンも多用されている。

図1 バー・スクリーン(A)正面図(B)平面図(上部).jpg

図1 バー・スクリーン:(A)正面図(B)平面図(上部)
A:ゴミ捕捉用のバー、B:水路のコンクリート壁

 
2.自動掻き上げ式バー・スクリーン
 上水道、下水道、大型浄化槽、食品工場などの水浄化工程の初段に設置される。上記バー・スクリーンに自動掻き上げ装置を付加したものである。水路に設置される事例を図2に示す。
 スクリーンに捕捉されたゴミ・異物を掻き取る爪をチェーンやゴムベルトに取付て、常時掻き上げてゴミ・異物を排出する。掻き上げ装置は、スクリーンの表側または裏側に設置される。バーの隙間は1~50mmまであり、大きさによって18~300m3/hまで処理できる。
 また、バーの代わりに、V型支持体に沿って、ゴムベルトそのものを上向きに回転させて、ゴミ・異物を取り除く方式も開発されている。

図2 バー式自動掻き上げ(裏掻き式)スクリーン(A)正面図(B)側面図.jpg

図2 バー式自動掻き上げ(裏掻き式)スクリーン:(A)正面図(B)側面図
A:バー・スクリーン、B:コンクリート水路壁、C:水路水の導入枠板、D:捕捉し渣の自動掻き上げ装置、E:し渣受け

 
3.傾斜式ワイヤ・スクリーン
 傾斜式ワイヤスクリーンは、原水をスクリーン上部から流下させ、ゴミ・異物を取り除く。目幅(ワイヤの平行間隔)は1~50mmまであり、40~800m3/hまで処理できる。(1) 噴射ノズルをスクリー面に沿って移動しスクリーンを自動的に洗浄する方式や (2) スクリーンを振動させてゴミ・異物を落下させる方式もある。
 ワイヤスクリーンの代わりに、目的に応じた口径の穴を等間隔で開けた板状のスクリーンもある。

図3 自動洗浄型傾斜ワイヤー・スクリーン(A)正面図(B)側面図.jpg

図3 自動洗浄型傾斜ワイヤー・スクリーン:(A)正面図(B)側面図
F1:流入原水、F2:処理水、A:ワイヤ・スクリーン、B:原水の散水装置、C:洗浄水噴射ノズル(上下移動式)、D:し渣受け

 
4.回転ドラム式スクリーン
 円筒構造の枠に微細な金網または繊維布(図4(A)の褐色円で示す部分)を貼り付けたドラムを低速回転させながら、このドラムに原水を流入させて、連続的に、ゴミ・異物・固形物を取り除く方式である。
 1) ドラムの上部を水面上に残して本体を水路の水面下に浸漬し、原水をドラム入り口に導入し、原水をドラム面を通して内側から外側に流出させる方式。
 2) 水路よりも低い位置に本体を設置して、原水をドラム内に導入し、原水をドラム面を通して内側から外側に流出させ、処理水受けで集水して排出方式。
 いずれの方式も処理水をドラム上部ノズルより洗浄水を噴出して、スクリーンに付着したゴミ・異物を洗い落とす。
 ドラム内にはらせん状の仕切り板を取り付けて、捕捉したゴミ・異物を回転により出口へ移送し排出する。本装置は狭い場所での使用が可能で、スクリーンの種類を目的に応じて変えることができるので、様々な分野で広く活用されている。

図4 回転スクリーン(A)断面図(B)ドラムの立体モデル図.jpg

図4 回転スクリーン:(A)断面図(B)ドラムの立体モデル図
F1:流入原水、F2:処理水、RD:回転ドラムとスクリーン、C:捕捉し渣の洗浄ノズル、PS:し渣の排出

 
5.生活排水のゴミ・異物除去
 家庭では、台所の三角コーナー(ネット取付)、洗面台のヘヤキャッチャー、風呂場の排水口の目皿など、排水管の入口に調理くず・ゴミ・髪・異物を取り除く用具(スクリーン)が取り付けられている。洗濯機には、循環水・排水中の繊維くず・ゴミ・髪を捕捉するスクリーンが付設されている。これらのスクリーンが閉塞すると排水が不十分となるので、スクリーンを取り出して、ゴミ・異物を取り除き、付着したスライムをブラシ・タワシなどで洗浄・除去して、元の位置に装着している。
 キッチン流しのゴミ受けの例を、写真 1a~1dに示す。ゴミ受けは2段になっていて、上段に粗ゴミネットと下段に微細ネット(水切りストッキング)を装着している。

写真 1a フィルターネット交換前.jpg

写真 1a フィルターネット交換前

写真 1b フィルターネット交換後.jpg

写真 1b フィルターネット交換後

写真 1c 流しコーナーに設置.jpg

写真 1c 流しコーナーに設置

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写真 1d フィルターネットの事例

 
下水汚泥中の異物除去の事例
 余談であるが、編集者が下水処理施設から排出される混合汚泥を実験に供する場合には、前処理として、5cm、2cm、1cmの金網の円盤を一定間隔で水平に固定(エアリフト管と一体で、脱着可能)した円筒槽に汚泥を投入した後、汚泥をエアリフト循環して、ゴミ・異物を除去している。金網に捕捉されるゴミ・異物の大部分は、衣類の綿くずと髪である。砂は、円筒槽の底部に沈積するが、極めて少量である。居住部屋を掃除して、掃除機のフィルターに捕捉されるゴミの大部分も綿くずで、次に髪である。同じ傾向が、下水汚泥にも見られる。

図5 実験供試用の下水混合汚泥からのゴミ・異物除去の事例.jpg

図5 実験供試用の下水混合汚泥からのゴミ・異物除去の事例
AP:汚泥循環用エアリフト管、S5:5cm金網、S2:3cm金網、S1:1cm金網

Ⅱ.沈殿池の基礎

1.固形粒子の沈降特性

 
(1)自由沈降と干渉沈降
 粒子が液体中で沈降するときの状況は、自由沈降と干渉沈降の2つに大別される。
 自由沈降は、個々の微粒子がそれぞれ固有の速度で沈降する現象であり、粒子濃度が低いときに観測される。粒子の自由沈降の濃度域は、液体の種類・温度、粒子の密度・サイズ・形状・表面電荷などや共存する電解質などによって異なる。
 干渉沈降は、粒子濃度が高いとき、粒子同士が集合したり、干渉したりして、明瞭な界面を形成して沈降することで、界面沈降(または集合沈降)ともいう。界面沈降は、自由沈降に比べてその速度が遅は遅いが、清浄な上澄み液が得られる。代表的な例として、浮遊性生物処理における活性汚泥などがある(図1のB1~B3)。
 どのくらいの濃度から、界面沈降が起こるのか、粒子の種類によって異なる。凝集性のない炭酸カルシウムでは、およそ10,000mg/L以下は自由沈降となる。一方で、活性汚泥では、2,000mg/L以上くらいから界面沈降を示す。
 同じ種類・形状で、個々のサイズが若干異なる水より比重の大きい粒子を含む水をシリンダーに入れて、沈下する状況を時間経過に沿って観察すると、①自由沈降→②干渉沈降→③圧縮沈降の現象が観測される(図1のA1~A3)。①の段階では、個々の粒子は自由沈降する。②の段階では、粒子同士が接近して、相互に作用を及ぼすようになり、干渉沈降するようになる。③の段階では、つぎつぎに沈降した粒子層の重みにより、それらの粒子間の隙に存在する水が抜けて、沈積層が圧縮される。

図1 シリンダーによる粒子沈降の経時変化の事例:(A)水田などの泥水、(B)活性汚泥の混合液.jpg

図1 シリンダーによる粒子沈降の経時変化の事例:(A)水田などの泥水、(B)活性汚泥の混合液
1:沈降開始時の状況、2:初期沈降の状況、3:終期沈降の状況

 
 現実にある環境水や汚水には、様々な電解質や固形物質が含まれており、また、それらの濃度も異なるので、シンダーに入れて固形物質の沈降状況を観察すると、自由沈降・干渉沈降が混在するもの、自由沈降・干渉沈降・圧縮沈降が明確で短時間で終了するものから、各段階の沈降が極めて遅く圧縮沈降に至るまで数日間を要するものもあるなど、様々な状況が観測される。
 土木工事現場の泥水・工場の沈降分離工程・生活排水の沈降分離工程での代表的な固形粒子の沈降特性を表1にまとめて示す。

表1 代表的な固形粒子の沈降特性の分類.jpg

表1 代表的な固形粒子の沈降特性の分類

(2)界面沈降速度
 汚泥の初期濃度を変えて、汚泥界面(例えば、図1:B1~B3)の高さを一定時間ごとに測定すると、図2に示すような界面沈降曲線が得られる。沈降の初期においては、界面の沈降速度はほぼ一定で直線に近いので、定速沈降領域という。ある時間を過ぎると、沈降速度が急激に減少するようになり、これを減速(または圧密)沈降領域という。定速から減速に変化する時点を境界圧密点(または臨界点)というが、汚泥の濃度や種類によっては、明瞭に認められないこともある。

 

図2 汚泥の界面沈降曲線 C1~C3:初期汚泥濃度.jpg

図2 汚泥の界面沈降曲線 C1~C3:初期汚泥濃度

(3)沈降特性と分離プロセス
  重力沈降によって固液分離操作を行う場合には、効率的な面から2つに分けられる。すなわち、上記の定速沈降領域を利用するプロセスを清浄沈殿池(槽)(クラリファイヤー、または沈殿池)といい、減速(または圧密)沈降領域を利用するプロセスを沈殿濃縮池(槽)(シックナー、または濃縮池)と称している。沈殿池および濃縮池の特性と設計については、下記に示す。

 

2.沈降速度


 粒子が流体中で沈降するとき、粒子には重力と流体から受ける抵抗力が働き、やがて、一定の速度で沈降するようになる。この速度を終末沈降速度という。この速度は、流体のレイノルズ数(Re)によって、ストークス(Re≦2)、アレン(2<Re≦500)、ニュートン(500<Re≦105)の各式が提案されているが、汚水処理で扱う沈殿池(槽)の沈降分離の多くは、Re≦2である。
 ストークスの式は、次式で示される。

  Vs = g/(18μ)・(ρs – ρ)・d2
  Vs:粒子の沈降速度[cm/s]、g:重力の加速度[cm/s2]、μ:水の粘度[g/cm/s]、ρs:粒子の密度[g/cm3]、ρ:液体の密度[g/cm3]、d:
​  粒子の直径[cm]


この式に示されているように、粒子は水より重いほど、また、粒径の2乗に比例して速く沈降することとなる。粒径が10倍になれば、沈降速度は100倍となる。凝集法は、微細な粒子を、それらの凝集体に形成させて、その粒径を大きくして沈降分離効率の向上を目的とする手法である。

レイノルズ数 Re
 流体力学では、流体の慣性力と粘性力との比で定義される無次元量で示される。レイノルズ数は、層流や乱流のような流れの異なる流域を特徴づけるためにも利用される。層流においては、低いレイノルズ数において発生し、粘性力が支配的で、滑らかで安定した流れが特徴である。乱流については、高いレイノルズ数において発生し、そこでは慣性力が支配的となり、無秩序な渦や不安定な流れが特徴である。流体の流れは、一般的には無秩序であり、通過する水路の形状(円・矩)や表面積の粗さなどの非常に小さな変化が異なる流れの発生原因となる。

沈降速度分布
 汚水中の固形粒子群では、様々な形状・密度・粒径が異なるので、前段でスクリーンや沈砂池などにより、ある程度、同一な種類の粒子群に分別される。それでも、形状・密度・粒径が異なるので、沈降速度に分布が認められる。例えば、同じ形状・密度の粒子群でも、その粒径が異なれば沈降速度に分布が生じ、また、粒径が同じでも、形状・密度が異なれば沈降速度に分布が生じる。沈降分離操作において、分布の幅が狭いほど、その分離効率が向上する。

 

3.沈殿池と水面負荷


 以下に記載する原理・方式は、沈殿池の仕組みを理解する上で極めて重要なものであるが、自由沈降する粒子に適用する理想的な条件下で成立するのものであって、具体的に沈殿池を設計する場合には、個々の目的に応じて、実験的に設計値を求めることとなる。沈殿池には、上昇流式あるいは横流式(水平流式)が採用される。

(1)上昇流式
 上昇式沈殿池(図2(A))において、粒子の沈降速度Vsが汚水の上昇速度Vよりも大きければ、粒子は沈降し、小さければ汚水とともに流出する。汚水の上昇速度V[m/d]は次式で示される。

  V = Q/A    (1)
  Q:汚水の流入量[m3/d]、A:沈殿池の面積[m2]


 沈殿池の設計では、Vs > V となるように、沈殿池の面積Aを設定する。Vは流速であるが、これを水面積負荷または表面積負荷という。流入量Qで、粒子の沈降速度Vsの沈殿池の必要面積Aは、(1)式より、A > Q/Vs となる。
 例えば、流入水量10,000m3/d、粒子の沈降分離速度15mm/minのとき沈殿池の必要面積は、次のようになる。

  A > 10,000[m3/d]/15[mm/min]/60[min/hr]/24[hr/d]*1,000[mm/m] = 463[m2]

(2)横流式
 横流式(図2(B))(または、水平流式)では、汚水が流入してから流出するまでの時間(汚水の滞留時間)T[d]内に、沈殿池の底部までに沈降する必要がある。沈降速度Vs[m/d]とすると、粒子の沈降する水深Hs[m]は、次式で示される。

  Hs = Vs・T

 一方、深さH[m]、面積A[m2]の沈殿槽に、流入量Q[m3/d]の汚水が流入すると、その滞留時間Tとの関係は、次式で示される。

  T = A・H/Q → H = Q・T/A

 Hs>Hであれば、汚水が流出する前に、粒子が底部まで沈降するので、次式が成立する。

  Vs・T > Q・T/A → Vs > Q/A(= V)   (2)

 以上のことから、上昇流式でも横流式でも、同一の種類の粒子に対しては、設計条件は同一の表面積の沈殿池となる。
 横流式は、上昇流式よりも効率がよい。この理由は、図2(B)に示す整流壁P1のH’の位置から流入した粒子の沈降速度がV’s<Vであったとしても、整流壁P2に達する前に沈殿池の底面に達する沈降速度であれば、その粒子が分離できることによる。

 

図3 代表的な沈殿池:(A)上昇流式、(B)横流式.jpg

図3 代表的な沈殿池:(A)上昇流式、(B)横流式
F1:流入原水、F2:処理水、P1 & P2:整流壁

4.連続沈殿濃縮池

 
 化学工業での析出沈殿物(工業原料の生産)の濃縮や大型浄化槽・下水道処理施設での汚泥の濃縮などに、連続沈殿濃縮池が利用される。この操作により、汚泥容積は1/2~1/4程度までに減容される。濃縮池では、上澄み層、沈降層、圧縮層が形成され、一定の流量で原汚泥が供給される条件では、池内の各層は定常状態に保たれる。
 連続沈殿濃縮のモデルを図4に示す。物質収支は次式で示され、上澄み液が清浄(Cs ≫ Co)であれば、式(3)で近似される。


  Ci・Qi = Cs・Qs + Co・Qo 
  Ci・Qi = Cs・Qs  (3)

図4 連続沈殿濃縮のモデル.jpg

図4 連続沈殿濃縮のモデル
Q、C:流量、汚泥濃度; i:供給原汚泥、o:流出上澄み液、s:排出濃縮汚泥

 
質量沈降速度
 汚泥濃度C[kg/m3]、その沈降速度Vs[m/d]としたとき、


  Gs = C・Vs   (4)

 Gs[kg/m2/d]は、質量沈降速度といわれる。1.固形粒子の沈降特性で述べたように、Cが低くて、自由沈降に近い領域では、濃度が多少変化してもVsはあまり影響を受けないので、Gsの値はCとともに増大する。Cがさらに高くなると粒子同士の干渉が激しくなって、Vsは次第に小さくなり、ついにはゼロに漸近するので、Gsもゼロに近づいていく。この状況を、汚泥濃度Cに対して質量沈降速度Gsをプロットすると、図5の②(緑線)のような挙動を示す。
 ところで、シックナー内部では、濃縮汚泥の排出量Qsによって下向きの流れが生じる。表面積A[m2]とすると、汚泥の下向き速度はQs/Aとなるので、この効果による質量沈降速度Gt[kg/m2/d]は、次式のようになる。


  Gt = C・Qs/A   (5)

 連続式シックナーでは、QiとQsは一定に保たれているので、汚泥濃度Cと質量沈降速度Gtの関係は図5の青線①のように直線関係にある。

連続シックナーの表面積
 シックナー内での、総質量沈降速度Gは、汚泥自身の沈降によるものGsと汚泥排出の流れによるもの合計Gtとなり、式(4)および(5)から次式が得られる。


  G= Gs + Gt = C(Vs + Qs/A)   (6)

 汚泥濃度CとGの関係を図示すると、図5の赤曲線③のようになる。このことから、供給汚泥濃度Ciから排出汚泥濃度Csに至るまでのある濃度Cmにおいて(Ci < Cm < Cs)、総質量沈降速度Gは極小値Gmを示すこととなる。この沈降速度Gmに対応する濃度Cmの汚泥層が汚泥処理能力を決定することとなる。
 図5の点線で示すように、Cm値は曲線③の極小値、または曲線②の変曲点から求める。Gm値は、曲線③の極小値を通る水平線か、あるいは、曲線②の変曲点とCs点を結ぶ直線と、G軸との交点のいずれかによっても求めることができる。
 定常状態では、式(7)が成立するので、式(8)が得られ、供給汚泥のCi、Qi、Gmの各値を用いて式(8)より、必要な表面積Aが決定できる。


  Gm = Ci・Qi / A = Cs・Qs / A   (7)
  A = Ci・Qi / Gm    (8)


 具体的には、図2に示す方法により、汚泥濃度Cを変えて界面沈降速度Vsを測定し、式(2)~(4)より、図5の曲線①~③で示すC-G曲線を作成し、Gm値を作図法により求める。

シックナーの設計と運転
 排泥量Qsを増減すれば、図5の直線①の傾斜が増減し、それに応じてG曲線③が上下し、GmおよびCsの値が変化して物質収支の平衡が保たれる。排泥濃度を高くするには、排泥量を絞り直線①の傾きを小さくすればよいが、それに伴ってGmも小さくなるので、給泥量Qiを減らすか、シックナーの面積Aを大きくしなければならない。限界値Gm以上の汚泥が供給されると、シックナー内に汚泥が次第に蓄積し、ついには汚泥が越流することとなる。

図5 汚泥の濃度Cと質量沈積速度Gの関係.jpg

図5 汚泥の濃度Cと質量沈積速度Gの関係
① Gs = C・Vs、② Gt = C・Qs/A、③ G = Gs + Gt
Vs:汚泥界面の沈降速度[m/d]、Qs:濃縮汚泥の排出量[m3/d]、A:シックナーの表面積[m2]

5.傾斜板による沈降効率化

 
(1)傾斜板の原理
傾斜板の発想
 容器を傾斜したときの沈降現象は、Boycottが試験管に入れた血液(赤血球)の沈降速度が、傾斜した試験管において速くなること発見した。これが沈殿池への傾斜板導入の発想となった。活性汚泥などの懸濁液を入れ、ゴム栓で密封したメスシリンダーを傾斜して沈降速度を観察すると傾斜角(θ)が小さいほど沈降分離速度が速いことが観察される。

図6 傾斜メスシリンダー内の沈降速度の様子.jpg

図6 傾斜メスシリンダー内の沈降速度の様子

 
傾斜板の原理
 上記図1のB1~B2に示す懸濁粒子であって、図2に示す理想的な定速沈降特性領域に適用した傾斜板の原理について説明する。
 図8に示すように沈殿池の分離面積A、傾斜板の面積So、その傾斜角θとし、界面沈降速度Vsとすると、t時間後に得られる沈殿池表面(qo)と傾斜板の下面(qt)に生成するそれぞれの清澄水量は次式で示される。


  qo = A×Vst  (9)
  qt = Socosθ×Vst  (10)


 式(9)および式(10)の関係より清澄液の総量(qo + qt)から、沈降開始後t時間後における普通の沈殿池の清澄液量に対する傾斜板付設の沈殿池の清澄液量の増加率は、次式で示される。

  (qo + qt)/qo = 1 + Socosθ/A  (11)

ここで、上記の傾斜板を平行・等間隔にn枚付設したときの増加率は、次式で示される。

  (qo + qt)/(qo = 1 + nSocosθ/A   (12)

図8 傾斜板の基礎.jpg

図8 傾斜板の基礎
θ:傾斜板の角度

 
傾斜板モデル
 式(12)から分かるように、付設する傾斜板の枚数が多いほど、その傾斜角θが緩やかなほど、沈殿池の清澄効率が向上することが理解できる。図9に示す普通池、傾斜板付設池(傾斜は板上部に沈積した粒子が自重により滑り落ちる角度θsdとする)および水平板付設(傾斜板と同じ枚数)池では、清澄液を得る効率(清澄速度)は(A)<(B)<(C)の順に高く(速く)なることが容易に理解できる。すなわち、傾斜板または平行板を沈殿池に設置する事により通常Hの沈降距離をhsまたはhpまで短縮できる。このことは、hs/Hまたはhp/H倍沈降時間が短縮され、沈降面積をH/hsまたはH/hp倍拡げる事を意味する。
 ところが、沈殿池(C)では、板状に沈積した粒子(沈積汚泥)の排泥が困難である。このことから、板状上に沈積した汚泥が自重落下する沈殿池(B)のモデルが実用化されている。上水場での凝集沈殿池においては、一般的に、θsd = 60° とされている。

図9 傾斜板のモデル.jpg

図9 傾斜板のモデル
(A)普通の沈殿池、(B)平行傾斜板付設の沈殿池、(C)平行水平板付設の沈殿池

 
(2)傾斜板沈殿装置
傾斜板モジュール

 図10に傾斜板の組立(モジュール)事例を示す。沈殿粒子は各傾斜板の表面に沿って自重により下降(→)し、清澄液は各裏面に沿って上昇(→)する。各傾斜板の上端と下端にはスリットが設けてあり、上昇する清澄水流と下降する沈殿粒子流を整流して、混合や水の混合を防いでいる。この上昇流と下降流とを巧みに利用した構成を発明したのは宇野昌平氏であった。傾斜板上部の沈積粒子の下降流と傾斜板下部の清澄液の上昇流とをジグザグ構成によって完全に分離したことが特徴である。
 このような配列は、懸濁液濃度が高いとき(表1の界面沈降)に効果が発揮される。希薄懸濁液(表1の自由沈降)に対しては、上昇流と下降流とは明確に分離しないので、このようなモジュールは適用できない。また、このモジュールは、上昇流式沈殿池に採用すると、屈曲部で清澄液の上昇流と沈殿粒子の下降流が衝突して混合が起こり分離効果は半減する。


清澄液の集水方法の改善
 図10示すモジュールでは、清澄液と懸濁粒子液は逆方法に流れている。このため両液体の境界面では乱れが生じ分離効率が悪くなる。この欠点を改善したのが下記に述べるモジュールである。
 この方式は、図10のジグザグ構造の最上段のみを延長し、傾斜板裏面の清澄液流路の下端に集水装置を取り付けたモジュールの導入である。原水を上部より導入し、清澄液と粒子液の流れを同じ方向として、両液の混合を防ぐとともに、清澄液の下降流が沈殿粒子の下降流速度を促進するので、傾斜板の角度を緩やかにできるので、沈降面積(式(5)のSocosθ)を大きくすることができる。
 傾斜板モジュールの特徴は、傾斜板モジュールを多層に積み上げることができるとともに、上昇流方式だけでなく、図11に示すように傾斜板に沿って水平に原水を通水する方式(水平流方式)が採用できることにある。

図10 傾斜板の組立(モジュール)と傾斜板内の分離現象 [井出、1976].jpg

図10 傾斜板の組立(モジュール)と傾斜板内の分離現象 [井出、1976]

図11 水平流式傾斜板(左)と具体例(右)[積水アクワシステム].jpg

図11 水平流式傾斜板(左)と具体例(右)[積水アクワシステム]

 
傾斜管モジュール
 傾斜板を組み合わせたモジュールの代わりに、図12の左図に示すような傾斜管を右図のようにモジュール(ユニット)化した沈降分離装置が開発された。傾斜管の形状として、正(長)方形、菱形、六角形、円形、V形などがある。一辺または相当直径は50cm前後である。同図では、各列ごとにクロスしているが、同一方向のモジュールもある。写真1に具体的な市販品の事例を示す。
 傾斜管モジュールは、ユニットが強度的に堅牢で、各ユニットを横方向・奥行き方向に並べて沈殿池の面積に応じて導入できるとともに、支持枠・棚に設置するだけで利用できる特徴がある。

図12 傾斜管とそのモジュール [(右図)磯村豊水機工].jpg

図12 傾斜管とそのモジュール [(右図)磯村豊水機工]

写真1 傾斜管モジュールの具体例 [(左)JFEアクワサービス機器、(中)前澤工業、(右)オルガ].jpg

写真1 傾斜管モジュールの具体例 [(左)JFEアクワサービス機器、(中)前澤工業、(右)オルガ]

 
(3)傾斜板沈殿池
傾斜板設置上の留意事項

 沈降装置の形状により、水平流の中で用いるもの、上向流の中で用いるもの、どちらの方向の水流にも使えるものがある。
 傾斜板沈殿池では、水流が沈降装置外を通ると、沈殿効率が著しく低下するので、短絡流が生じないようにする必要がある。池内への流入を均等にするために適正な整流壁を設け、また短絡流を防止するために阻流壁、阻流板、側流止めを設ける(図13のa、dなど)。また、沈殿効率を高めるために池内部での流速を定める、沈殿池で沈降装置内への流入が均等になるように、沈降装置を流入部に近接させて設置しないようにする、偏流によるフロックの巻き上げを防止するため沈降装置を流出部壁に近接させない、沈降装置下端と池底との間は 1.5m 以上あけて、堆泥の空間として確保するとともに、排泥設備の設置あるいは排泥作業、沈降装置の維持管理が円滑にできるようにする、等の注意が必要である。[水道施設設計指針, 2000]

図13 横流式沈殿池に設置した傾斜板沈殿装置の事例.jpg

図13 横流式沈殿池に設置した傾斜板沈殿装置の事例
a:阻流壁、b:越流トラフ、c:汚泥掻寄機、d:側下部阻流板、e:傾斜板モジュール

図14 円形上昇流沈殿池の傾斜板沈殿装置.jpg

図14 円形上昇流沈殿池の傾斜板沈殿装置
スクレーパー、汚泥排出溝、歩廊など省略

写真2 傾斜板設置円形沈殿の事例 [水道機工].jpg

写真2 傾斜板設置円形沈殿の事例 [水道機工]

 

参考文献・引用写真
 磯村豊水機工株式会社:特開2010-264409
 井出 哲夫:水処理工学-理論と応用-、技報堂出版(1976)
 日本水道協会:水道施設設計指針 2000
 オルガノ株式会社:https://www.organo.co.jp/products/technology-service/tapwater-sewerage- 

          technology/00175_%e3%82%aa%e3%83%ab%e3%83%91%e3%83%83%e3%82%af/
 水道機工株式会社:https://www.suiki.co.jp/hensen/75_84/80_1.html
 積水アクワシステム株式会社:https://www.sekisuia.co.jp/infra/product/keisya/index.html
 JFEアクワサービス機器株式会社:http://jfe-jms.co.jp/products/3-1.html
 前澤工業株式会社:http://www.maezawa.co.jp/ja/product/jyosui/p-108.html

Ⅲ.砂・塵の除去

 
上水、下水、工場、農場、土木工事など、用水・汚水・排水中には、細かな砂や粉塵などが混入している。このため、これらの微細な固形粒子物質を除去する工程が必要となる。

表1 土質の種類とサイズ.jpg

表1 土質の種類とサイズ

1.沈砂池

 
 下水処理の沈砂池は、粒径0.2mm以上の砂を分離することを目的とし、池内の平均流速は0.15~0.30m/sを標準としている。沈砂池では、砂等の無機物だけを除去し、有機性物質はなるべく後段の処理工程へ送り込む方法が取られる。
 以前には、沈砂を洗浄し、有機物を元の下水に戻すことが行われていたが、最近では、散気管を設けて空気を送り込む方式(曝気沈砂池、図1)が普及している。これは流入汚水に溶存酸素を与えて好気性に保つことと、曝気よる旋回流により砂と有機物を分離する効果が大きいからである。集積砂に有機物が混在すると、腐敗が進行し悪臭を発生することと、その処理・処分が煩雑となるからである。
 また、中・大型の浄化槽では、ばっ気によって泡が多量に発生することもあり、この場合には散水ノズルなどによる消泡装置が必要となる。
沈砂池では長方型で水平流式のものが多い。砂の排出は、小・中規模なものでは人力やエアリフトポンプを用いるが、大規模なものでは機械的な掻き寄せ機が用いられる。

図1 生活系排水の曝気沈砂池(槽)の事例:(A) 正面図、(B) 平面図、(C) 集砂用底部側面図.jpg

表1 土質の種類とサイズ

2.傾斜板式沈殿池

 
 傾斜板は,その枚数により沈殿池の表面積(n・A・cosθ; n:板枚数、A:板面積、θ:板傾斜角度)を増やすことができる。傾斜板の表面に沈降した固形物質は、ここで沈降濃縮されることにより傾斜板の表面を滑り落ちる。傾斜板式沈殿池は,沈殿池の性能を飛躍的に高めることができ、また取り外しも容易で構造物による階層式よりはメンテナンスが容易、既設池に追加可能、動力不要など数多くのメリットがある。
 原水中の微細な砂・塵などの除去を目的として、上水の浄化施設や工業用水の前処理施設として多用されている。ただし、増水した雨水が大量に流入すると、傾斜板が破損・破壊されるので、増水時の対策が取られている。

3.サイクロン式除砂装置

 
 土木工事現場の微細な砂、冷却塔の粉塵・錆、工場・発電所などの熱交換器のスラッジ、各種工場でのスケール・スラッジ、淡水化施設の分離膜システムなどでは、ポンプ・各装置の摩耗や破損を防ぐことを目的として、砂・粉塵・スラッジなどの微細な固形物の除去にサイクロン式分離機が用いられる。
 この装置は、遠心分離機の応用ともいわれ、数十μm程度の固形物の除去に用いられ、小型から大型の装置まで実用化されている。
 比重の大きい固体の混じった液体を漏斗状または円筒のサイクロンの円周方向から液体の流速により渦を描く様に導入する。この際、液体の排出方向はサイクロンの円の中心から上方向に排出する。固体は、旋回流の遠心力により分離されて壁面に衝突し、その後、重力により落下、下部に溜まる仕組みである。液体は円の中心から上昇流により排出されるため、水よりも比重の大きい固体成分が効率よく除去されることとなる。

図2 サイクロン式除砂装置.jpg

図2 サイクロン式除砂装置
(A) 本体正面図、(B) 流入・流出部の断面図(上向き)
F1:流入原水、F2:処理水、A:空気抜き、B:覗き窓、C:集砂排出バルブ、S:集積砂