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酸化と還元の基礎

※本ページは『水浄化フォーラム』より転載しています。
<謝辞>
 「水」の安全確保と環境保全に係る知識と技術を、「水の浄化」に関わる方への参考となるサイトとして『水浄化フォーラム』を執筆・編集・管理いただいている
 環境技術学会 村上理事に心より感謝申し上げます。

 

<目次>
1.物質間での電子移動
2.反応の自由エネルギー変化
3.酸化還元電位とは
  (1) pHと電位
  (2) 標準酸化還元電位
  (3) 酸化還元電位のまとめ
4.酸化還元電位の具体例
  (1)金属の酸化還元電位
  (2)各物質の酸化還元電位
5.水質測定の事例
6.水浄化の事例

 

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1.物質間での電子移動


単体・化合物・イオンなどの物質は相互に、その物質中の原子を構成する電子を授受して安定な状態を保っている。電子の移動反応では、放出する物質Red(電子供与体または還元剤)と受け取る物質Ox(電子受容体または酸化剤)の両物質が必ず存在する(Red:reductant、Ox:oxidant、Redox反応-酸化還元反応)。
見かけ上、物質間の電子移動反応は観測することはできないが、酸化還元反応を関与する反応過程を分解することで、その電子移動反応を理解することができる。
例えば、酸性水溶液中で、Fe2+が溶存酸素O2によって、Fe3+に酸化される反応は、次式(1)で示される。

  4Fe2+ + O2 + 4H+ = 4Fe3+ + 2H2O  (1)

上記の反応過程を分解すると、次式で示される。

  4Fe2+ = 4Fe3+ + 4e–  (1a)
  O2 + 4H+ + 4e– = 2H2O  (1b)

式(1a)に示すように、Fe2+は電子e–を放出して、Fe3+に変化している。一方、O2は4e–を受け取り、4H+と結合して2分子のH2Oに変化していることが理解できる。
なお、酸性における式(1)の反応速度は極めて遅く、pH上昇とともに反応速度は指数関数的に増加するが、Fe2+やFe3+は水酸化物を形成して反応系が複雑となるので、説明を簡単にするために、酸性での反応系を扱うこととする。

 

物質間での電子移動

2.反応の自由エネルギー変化


物質Xの自由エネルギーGXは、次式で示される。
 GX = μX   μX = μ°X + RT ln aX  (2)
 (μX:化学ポテンシャル、aX:活量)

反応(1)の自由エネルギー変化ΔGは、
 ΔG = Gright – Gleft  (3)
 = 4GFe3+ + 2GH2O – 4GFe2+ – GO2 – 4GH+  (3a)
 = ΔG’°+ RTln K’
 = ΔG°+ RTln K  (3b)
 (式(3a)に、式(2)を代入)
 ΔG’° = 4μ°Fe3+ + 2μ°H2O – 4μ°Fe2+ – μ°O2– 4μ°H+
 K’ = (aFe3+)4(aH2O)2/((aFe2+)4(aO2)(aH+)4)
 (水の活量aH2Oは一定とする)
 ΔG° = ΔG’° – 2RTln aH2O
 K = (aFe3+)4/((aFe2+)4(PO2)(aH+)4)  (3c)
 pK = 4paFe3+ – 4paFe2+ – pPO2 – 4paH+
 pK = 4pFe3+ – 4pFe2+ – pPO2 – 4pH  (3d)
 (K:平衡定数、pX = –log[X])
 (希薄溶液:aX = fX[X] = [X]、fX = 1)
 (PX:気体の分圧(atm))

今、化学反応はΔGが減少する方向へ進行するので、反応式(1)において、自由エネルギー変化ΔGの式(3~3d)の関係より、
(a) Gleft > Gright すなわち 4pFe2+ + pPO2 + 4pH < pFe3+ のとき、右方向へ反応が進行する(例えば、Fe2+濃度・酸素分圧PO2の増加やpHの低下)。
(b) Gleft < Gright すなわち 4pFe2+ + pPO2 + 4pH > pFe3+ のとき、左方向へ反応が進行する(例えば、無酸素状態やpHの上昇)。
(b)において、他の酸化剤を投入するか、白金などの不活性な一対の電極を浸して電圧を加えるなどでは、Gleftに外部エネルギーGoutが加わり、Gleft + Gout > Grightとなれば、右方向へ反応が進行することとなる。
なお、水浄化における具体的な電極反応プロセスおよび浄化プロセスの設計・制御に重要な電位-pHの平衡図については、別のページで解説する。

 

反応の自由エネルギー変化

3.酸化還元電位とは


上記の反応過程(1)は、電子を含むイオン反応式(1a)と(1b)に分解すると、物質間の電子移動が理解できることが示された。この分解された反応は、半反応とも呼ばれる。
水溶液中において、物質A、電子e–および水素イオンH+)が関与する半反応は次式で一般化できる。

  aA + mH+ + ze– = bB + cH2O  (4)

反応(4)では、電気量zFを伴うから自由エネルギーの変化は、

  ΔG = -zFE → E = -ΔG/(zF)  (5)

式(5)は、上記(2)・(3a~d)に示した各関係式と同様に扱い、E°= -ΔG°/(zF)とすると、次式で示される。(正確には、ΔG → ΔG° – c(μ°H2O + RTln aH2O) である。)

  E = E°- RT/(zF) ln K  (6)
  K = (aB)b/((aA)a (aH)m))

温度25℃(T=298K)において、定数R(=8.314 J/K/mol)、F(=96,500 C/mol)、ln = 2.303logを用い、式(6)を書き直す。
 
 E = E°- 0.0591(m/z)pH + 0.0591(1/z)(a log aA – b log aB)
  = E°- 0.0591(m/z)pH – 0.0591(1/z)(apA– bpB)  (7)
  (Eの単位:V(volt) = J/C)

 

(1)pHと電位

(a)m=0
 このケースでは、酸化還元電位Eは、 r = apA – bpB = p(Aa/Bb) によって変化する。pHは関与しない。

(b)m≠0
 このケースでは、酸化還元電位Eは、前記 r が一定であれば、pHが±1ほど‘増減’すれば、0.059(m/z)[V]ほど‘減増’することとなる。

 

(2)標準酸化還元電位 E°

一般に数表に表示されている酸化還元電位は、反応式(4)において、関与する全ての物質Xの活量aX = 1 としたときの値でpX = 0となり、式(7)はE = E°となる。
温度25℃、関与する物質の活量を’1’としたときの電位を標準酸化還元電位という。
なお、酸化還元電位の絶対値を求めることは不可能で、基準となる半反応の電位を‘0’と定め、これに対して目的とする半反応の電位との電位差を測定し、その値を目的とする半反応の酸化還元電位としている。一般的には、標準水素電極SHE(standard hydrogen electrode)の電位を基準としている。

  2H+ + 2e– = H2  (8)
  (pH = 1.0、PH2 = 1.0atm)

 

(3)酸化還元電位のまとめ

(a) 酸化還元電位の基準
 ①式(8)で示す標準水素電極の電位SHEを’0’とする。
 ②半反応(4)の電位Eは、SHEに対する電位差[V]で示す。

(b) 物質Xの活量
 ①酸化還元反応に関わる各物質Xは活量aXで示す。
 ②固体X(s)の活量および水H2Oの活量は’1’とする。
  aX(s) = 1 → log aX(s)= 0; aH2O = 1 → log aH2O = 0
 ③物質Xの活量aXは、水溶液中の濃度[X]を用いて表すと、aX = fX[X]の関係があり、fXを活量係数(0<fX≦1)といい、無限希
  釈 
  ([X] → 0)のとき、fX → 1となる。したがって、希薄溶液では、aX = [X]として扱ってもよいこととなる。

(c) 標準酸化還元電位E°
 半反応(4)の標準酸化還元電位E°は、温度25℃、反応に関わる全物質の活量aXi = 1のときの、式(6)で示す酸化還元電位Eである。

留意事項
 一般的に、標準酸化還元電位E°は、式(5)で示す自由エネルギー変化ΔGから求められている。実際に、電気化学的手法を用いて
 SHEに対して式(4)の電位Eを測定したとき、式(6)から計算した電位Eと一致しない。電気化学測定においては電解質を加えるの
 で、この電解質との相互作用により反応に関与する物質Xの活量が異なるからである。
 電解質を加えない純水中で物質Xを無限に希釈して、電位Eを測定すれば、aX = [X]となり、ΔGから求めた式(5)と実験的に式(6)か
 ら求めた電位Eは一致することとなろうが、このような実験系での電位の測定は不可能である。

 

酸化還元電位とは

4.酸化還元電位の具体例

(1)金属の酸化還元電位

(a)金属の酸化還元電位と一般的性質
 代表的な金属-金属イオン(水和)の標準酸化還元電位(標準電極電位)を表1に示す。酸化還元電位(以下、Redox電位)が低 
 い金属は外殻電子エネルギーが高く、電子を放出してイオン化する傾向(還元力)が強い。

①Redox電位の低い金属(電子を放出する傾向が極めて高い)
 Li~Naは、常温でも空気中の酸素と速やかに反応して酸化物を生成する。水とは常温で反応してH2ガスを発生して、自らはイオン
 となり水に溶ける。

②Redox電位が中程度の金属(電子を放出する傾向が中程度)
 Mg~Pbは常温では空気中の酸素と反応しにくいが(Mgは比較的反応しやすい。)、放置すると表面に酸化皮膜をつくる。高温で
 は空気中の酸素とよく反応し、MgやAlの粉末を空気中で熱すると、強い光を出して燃え、酸化物 MgOやAl2O3となる。
 Mgは熱水と反応し、水酸化物Mg(OH)2を生成する。ZnやFeは高温の水蒸気と反応してH2ガスを発生し、自らは酸化物ZnOや
 Fe3O4となる。
 Ni、Sn、Pbは希酸に溶けてH2を発生するが、空気中の酸素との反応は起こりにくい。Niより、Redox電位の高い金属は水とはほ
 とんど反応しない。Pbは不溶性のPbCl2やPbSO4を生成するので、HClやH2SO4にはほとんど溶けない。

③Redox電位の高い金属(電子を放出する傾向が低い)
 水素H2よりもRedox電位が高いCu~Auは空気中の酸素と反応しにくく、希酸とも反応しない。CuやHgは空気中で加熱すると酸
 化されて酸化物となる。Cu~Agは酸化力のある酸(希硝酸・濃硝酸/熱濃硫酸)とは反応し、NOx/SO2ガスを発生し、自らは
 イオン化して溶ける。
 PtやAuは王水(濃塩酸1+濃硝酸3)のみにイオン化して溶ける。PtやAuは空気中でも安定して存在する。

 

表1 金属の酸化還元電位と酸素・水との反応.jpg

表1 金属の酸化還元電位と酸素・水との反応

(b)金属と他金属イオンとの反応
 図1(A)に示すように、硫酸銅(Ⅱ)CuSO4水溶液に亜鉛板Znを浸漬すると、ZnがZn2+として溶解し、Zn板状上にCuが析出
 して被膜を形成する。また、図1(B)に示すように多孔質の隔壁(素焼き板)で隔てた両室に硫酸銅(Ⅱ)および硫酸亜鉛(Ⅱ)
 の各水溶液(希硫酸で酸性とする)を満たし、それぞれにCu板およびZn板を浸漬して、両板をリード線で接続すると電流が流れ、
 Cu板上にはCuが析出し、Zn板からZn2+が溶出する(ダニエル電池)。
 これらの電子移動反応は、つぎのように説明される。なお、簡単のために、各イオンの活量係数を’1’とする。

   Zn2+ + 2e– ← Zn E = -0.76 + RT/(2F)ln[Zn2+]  (9)
   Cu2+ + 2e– → Cu E = +0.34 + RT/(2F)ln[Cu2+]  (10)

 外殻電子のエネルギーは、e–(in Zn) > e–(in Cu)であるので、電子はZn→Cuへ移動して安定化する(図2に示すように、電子は
 高いエネルギー状態から低いエネルギー状態へ移動する。)。すなわち、式(9)で左方向へ、式(10)で右方向へ反応が進行し、理論
 的にはlog[Zn2+]/[Cu2+]=37(式(9)と式(10)のEが等しくなるとき)に達したときに反応が停止する。
 この反応で放出されるエネルギーは図1(A)では溶液の温度上昇、図1(B)では外部抵抗体の発熱エネルギーに変換される。厳密に
 は、一部のエネルギーは溶液中でのイオン移動にも消費され、わずかではあるが溶液の温度上昇を伴う。

電池の表記
 図1(B)は、Zn|Zn2+‖Cu2+|Cu 、と簡略表記される。式(9)と(10)に示すように、イオン濃度により電位が変化するので、条件
 によっては電子の移動方向(電流は逆方向)は異なるが、ECu > EZn の場合には、(-)Zn|Zn2+‖Cu2+|Cu(+)、と表記すること
 もある。’|’は電子移動反応が発生する界面、’‖’は隔膜や塩橋(電解質イオンは透過するが、溶液は混合しない)を示す。Pt(不活
 性で電子の授受のみに関与)を用いた水素電極SHEとCu電極を塩橋で接続した電池は、Cu|Cu2+‖H+|Pt,H2(1atm)、のように
 表記される。

留意事項
 このページで述べていることは平衡反応(時間単位が含まれていない)であって、電子移動量の速度、すなわち、電流の大きさ(単
 位時間あたりに流れる電気量または物質の変化量に)については触れていない。これについては、浸漬金属の表面積、反応イオンの
​ 濃度とその移動速度、水-金属界面での活性化エネルギーなど、様々な因子が関与するので、別ページで記載する。

 

図1 酸化還元電位の異なる金属での電子移動反応.jpg

図1 酸化還元電位の異なる金属での電子移動反応

図2 酸化還元系における電子移動反応.jpg

図2 酸化還元系における電子移動反応

(2)様々な物質の酸化還元電位

様々な物質の標準酸化還元電位を表2~7に示す。ここでは、水浄化に関わる酸化還元反応の代表的な事例について、簡単に説明する。なお、下記の電池/電解系の表記法には正式でないものも含まれおり、簡略・平易化のために使用したので注意されたい。
 

表2 難溶性塩の標準酸化還元電位.jpg

表2 難溶性塩の標準酸化還元電位

表3 金属イオンの標準酸化還元電位.jpg

表3金属イオンの標準酸化還元電位

表4 金属錯イオンの標準酸化還元電位.jpg

表4 金属錯イオンの標準酸化還元電位

酸化還元電位の具体例

5.水質測定の事例


(a) pHの測定
 ガラス膜センサーの両面(検水側 pHx と標準液側 pHs = 7)に発生する電位差ΔEを参照電極を用いて測定し、検水のpHxを測定する。
 電位差は、高入力インピーダンス電圧計に、つぎに示すAg(+)極およびAg(-)極をリード線で接続して測定する。
 検水(t=25℃)のpHx = 7のときΔE = 0となるように電圧計を調整すると、pHx = ・・、6、7、8、・・のとき、ΔE[mV] = ・・、
 59.1、0.00、-59.1、・・となる。
 参照電極には、銀-塩化銀電極(Ag|AgCl/Cl–)(表2-19)が電位の再現性・精度に優れ、取扱いやすいため、多用されている。ガラス
 膜の電位発生機構については、省略する。

  Ag(+)|AgCl/Cl–(参照電極)‖検水(pHx)|ガラス膜|標準液(pHs)‖Cl–/AgCl|Ag(-)(参照電極)
  Ag(+)|AgCl/Cl– (reference electrode) ‖Test water (pHx)|Glass membrane|Standard solution
  (pHs)‖Cl–/AgCl|Ag(-) (reference electrode)
  ΔE = -RT/(F)(pHx – pHs)  (9)

(b) DO(溶存酸素)の測定
 隔膜電極法によるDO測定には、ポーラログラフ式(電気分解、電解)とガルバニ電池式がある。ポーラログラフ式では電極に対し加電
 圧するための外部電源が必要であるが、ガルバニ電池式では測定系そのものが電池を形成するので加電圧は不要である。
 いずれも、電解液(KCl)に浸漬した測定電極(作用電極)(Pt、AuまたはAgなどの不活性な金属)および参照電極(対極)(Ag|
 AgCl/Cl–、Ag|Ag2O/OH–、Pb|PbO/OH–など)から構成される電解/電池系で、この電解/電池系を酸素を選択的に透過させる隔
 膜で仕切ったものである。
 Pt(+)極とAg(-)極をリード線で電流計に接続する。検水中の酸素は隔膜を透過して上記電解系に入ると、つぎの電解反応がおこり、Ag
 極からPt極へ電子が移動し、酸素濃度に比例した電流(電子と逆方向)が流れるので、これをDO値に変換する。DOと電圧(電流を電圧
 に変換)の関係は、無酸素と飽和DOの水溶液で校正しておく。

  検水water/隔膜diaphragm/O2,Pt(+)‖Cl–/AgCl|Ag(-)

   Pt(+): O2 + 4H+ + 4e- → 2H2O  (e-の流入とO2への供与)
   Ag(-): 4Ag + 4Cl– → 4AgCl + 4e-  (e-の放出)

電極の極性

 電気化学(電気分解、電池)や電子回路では、外部から/へ、電流i/電子e-が流入/流出する電極をアノード(Anode)、外部へ/か
 ら、電流i/電子e-を流出/流入する電極をカソード(Cathode)と呼ぶ。一方、電位で電極の極性を定義するときには、電位が高い方
 を正極(+)、低い方を負極(-)と呼ぶ。電流は高い方から低い方向へ流れ、電子は低い方から高いほうへ移動する。
 電池系(放電)と電気分解系(加電または充電)では電子(または電流)の流れる方向が逆となるので、注意する。
 ①電気分解: 正極=アノード、負極=カソード、②電池: 正極=カソード、負極=アノード。

(c) COD(化学的酸素要求量)の測定
 CODは、検水に酸化剤として、過マンガン酸カリウムK2MnO4(表6-9)または二クロム酸カリウムK2Cr2O7(表6-8)を加え、一
 定の条件下(酸の添加、所定時間の加熱)で有機物と酸化剤を反応させ、反応終了後、残存する酸化剤を定量して、消費された酸化剤の
 量を求め、この消費量を酸素の量[mg-O2/L]に換算したものである。
 残存する酸化剤の定量には、還元剤、例えばシュウ酸カリウムK2C2O4(表7-9)が用いられる。

 

水質測定の事例

6.水浄化の事例


(a) 電解鉄とリン除去
 リン除去型小型浄化槽には、電解鉄法が広く用いられている。一対の鉄板を電源に接続して、電解溶出したFe2+(直ちに、酸素酸化され
 てFe3+に変換される。)がリン酸イオンと反応し不溶性塩Fe2PO4を生成させることにより、リンを除去する。

(b) オゾンと上水・下水
 オゾンO3は、非常に強い酸化力を有すること(表6-13)および水に溶けやすいことから、水中の物質を酸化し、脱色・脱臭・殺菌など
 に多用されている。トリハロメタンなども生成せず、水中で自然分解するので安全な方法といえる。

(c) 生物による酸化還元反応
 表7に示すように、有機化合物の酸化還元反応は理論的な水の電気分解(水素発生:0.00~酸素発生:1.23V)が起こらない範囲内にあ
 る。有機物の酸化還元反応ついては、通常の条件下ではその反応が進行しないことが多い。上記COD測定でも触れたが、二クロム酸カリ
 ウムK2CrO7による有機物の酸化では、硫酸酸性の沸騰水または還流(105℃)で1時間程度、反応させると有機物がほぼ完全にCO2に
 まで酸化分解されるが、同じ条件下でも過マンガン酸カリウムKMnO4では有機物を完全には酸化分解できない。
 しかしながら、好気性生物による酸化分解反応や嫌気性生物によるメタン発酵(複雑な細菌群による共生反応)などに見られるように、
 有機物の酸化還元反応が常温で進行する。植物による光合成反応では、常温で炭酸ガスを還元して有機物を合成する。また、温泉や深海
 熱水口では、硫化水素(表6-2)をエネルギー源とするバクテリアが存在し、深海熱水口ではバクテリアを捕食する生物やバクテリアを
 特殊な器官に付着/保持して有機物を摂取している生物などが生息している。これらの反応は複雑な生物化学反応から構成されており、そ
​ の機構は極めて複雑であり、生命とは凄いものである。

 

水浄化の事例
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